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Yamasaki Rinko

「泣けない看護師」感情労働の被害者になってはいけない

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看護師からの相談でのことです。
「電話していいですか?」というメッセージでした。
それほど関わったことのないナースからのメッセージだったので、私も何か必要に迫られる感覚がして対応しました。

 

2日前に自分の父親が自分の病院で急変して亡くなり、先ほど葬儀を終えて自宅に戻って来たところのようでした。
その経過を話す淡々とした口調とわかりやすさは、まさに“看護師”という印象でした。
そして彼女の相談は
「先生もスタッフもみんな一生懸命やってくれたし、感謝しているんです。
でも私…7日間の忌引が終わって、また元の自分に戻れる気がしないんです。
元通りの自分に戻って働く自信がないんです。みんな私の父親だって知ってるし…」と。

 

私自身が父親を亡くしたときの経験を話すと、彼女の心の中から後悔が溢れ出てきました。
後悔は、残された人の心の中に必ずあります。
私はこれでよかったのだろうか?、もっと他の方法があったのではないだろうか?と。
『人が死ぬのは、残される人にメッセージを送るため』
亡くなった人にしか伝えられないメッセージがあります。
言葉では言えない、生きている間には伝えられないメッセージ。
それは残された人のためのメッセージであり、残された人にしかわからないメッセージです。
それを身を以て伝えるのが人の死なのです。

 

そして彼女は気づき、苦しみを吐き出しました。
「私…泣けないんです。」
「泣きたいのに…!後悔することがいっぱいあって、お父さんに謝りたいのに泣けない…!」と。

 

 

 
なぜなのでしょう。
「泣きたいのに泣けない」
看護師は社会のために大きな役割を担う職業であるがゆえ、つい「24時間看護師」をしてしまいます。
過去のどこかで看護師になることを決めて、勉強して資格を取って、その役割を自分の職業として人生の一部に取り入れただけなのですが。
いつの間にか、白衣を脱いでも社会の役割に応えてしまうようになるんですね。
「私=看護師」になり、家族の死をも客観視してしまうのです。

 

彼女は後悔していました。
家で父親に関わるときも、看護師として関わっていたと。
病院で関わるときも、看護師として関わっていたと。
もっと娘として関わってあげればよかったと…。
取り返しがつかないことに対する後悔は、悔やんでも悔やみきれません。
苦しく切ない気持ちを、彼女は受け入れるしかありませんでした。

 

でもね、大丈夫なんですよ。
生きている私たちには人間関係があります。
どうしようもない後悔、どうにもならない切ない気持ち、その経験を他の誰かのために役立てることができます。
それができたとき、初めて後悔が報われて、あの経験をしてよかったと思えるようになります。
お父さんへの“ごめんなさい”が、“ありがとう”に変わるんですね。
彼女にはきっと、その経験を誰かのために役立てる機会が訪れると思います。

 

 

 
最後の15分は泣き崩れて嗚咽が続き、沈黙でした。
「大丈夫やね。もう泣けるよね。」と言ってそのまま電話を切りました。
そして一週間後、短いメッセージが届きました。
「昨日、忌引が明けて仕事に行ってみたけどやっぱり嫌だったので、今日は休んじゃいましたー」
「今は泣きたいときに泣いています」と。

 

ようやく自分らしさを取り戻されたように思いました。
看護をしているときも“自分”が一緒にいます。
残された家族の切なさを理解できない看護師は、看護師と言えないかもしれません。
また、休みたい自分を“悪”と思いながら休むと心に葛藤が生まれますが、
“私はまだ悲しいから休むんだ”と自分の感情を認めて休むのであれば、何の問題も生じない。
看護師という職業は人生の一部であって、“自分自身”の方がずっとずっと大切ですね。

 

悲しいときは十分悲しむこと。
亡くなった人と自分を慈しむ時間です。

 

 
看護師は感情をコントロールしなければならない難しい職業。
いつの間にか自分の感情に蓋をするのが習慣になってしまっているかもしれません。
看護師ONと看護師OFFのスイッチをつくって、上手に切り換えましょう。

 

 

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