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Rinko Yamasaki

認知症状や不穏症状に困って医師に相談しようと思ったときに読むやつ。

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認知症症状に社会が目を向け始めてから約30年。日本で初めて抗認知症薬が発売されてから約15年です。認知症にもアルツハイマー型やドビー小体性のものや血管性のものなど種類があり、さらにうつを伴っている場合や既往に統合性失調症がある場合など、認知症と言っても多様で人それぞれに違いがあります。

 
そして投与される薬においても、抗認知症薬を始め、抗精神病薬・非定型抗精神病薬・抗うつ薬・感情調節剤・抗不安薬・睡眠導入剤などさまざま。どのような薬の組み合わせがいいかいろいろ試して様子を観てみるしかないかもしれません。

 
看護・介護の場面で困るのは、暴言・暴力・大声・多動など他者に迷惑がかかる不穏症状だと思われます。どんな行動をとるか予測がつかず危険を伴い、感情的になっている要介護者を放っておくこともできず、否定することもできず、話をしても意思の疎通ができない…となると困り果ててしまいますね。また夜勤帯にたった一人の要介護者に一人の介護者が付きっきりになるわけにいかないので、どうすればいいかわからなくなります。

 
医師に相談して薬で調整してもらうしかない、と思うかもしれません。けれど迷うのは、そもそも認知症なので仕方のないことなのか、それとも医師に相談すればなんとかなるのか…、薬でコントロールしてしまってもいいのか、どうすることが要介護者のためなのか…ということではないでしょうか。介護士として何を観察し、何を相談することが最善なのでしょうか。

 

 

 
《認知症状や不穏症状には大きく分けて「周辺症状」と「中心症状」があります。》

 
「周辺症状」とは、暴言を吐く・暴力を振るう・大声で叫ぶ・大声で歌う・壁を叩く・外へ出ようとする・夜中に歩き回る・頻回にコールする・頻回にトイレに行く・過剰に食べる・まったく食べない・眠らない・起きない…など一つ一つの行動のことを指します。

 
介護士は要介護者のこういった行動に困り相談しようとすることが多いですが、この周辺症状を薬でコントロールすることは難しいのです。一つ一つの行動は介護士や家族など周囲の関わり方によって変わる症状です。とくに怒っている理由をよく聞くと、認知症ではあるけれども本人なりの理由を持っていることがあります。その場合薬の効果は期待しにくく、その原因を解決することが優先です。

 
「中心症状」とは、自律神経系の中枢神経による症状を言います。例えば24時間ずっと興奮しているとか、まる一日何も行動せず刺激にもほとんど反応がない場合など。行動ではなく「状態」です。主に薬の投与でコントロール可能なのは、この中心症状なのです。

 

 

 
よって介護士が「夜中に大声で叫ぶのを何とかしてください」と相談して内服が始まった場合、もしかすると何も問題がなかった日常に問題症状が現れることがあります。夜間の興奮を鎮めるために投与した薬が日数を重ねるごとに血中濃度が上がり、昼間の活動が減少して食事を摂らない、発語がなくなる、表情がなくなるなど、全般的に生活意欲が下がる恐れがあります。

 
逆に「食事を摂らないし、会話もないし、反応がありません」と相談して内服薬の投与が始まった場合、もしかすると何も問題がなかった夜間に問題行動が現れる恐れがあります。日中の活動意欲を上げるために投与した薬が日数を重ねるごとに血中濃度が上がり、夜間も活発になって眠らない、徘徊する、大声を出すなど、全般的に興奮状態になる恐れがあります。

 
そして困っていた問題行動はおさまったものの、また別の問題行動が現れて、今度はその行動を医師に相談しなければならない…というような経験がないでしょうか。薬の投与でピンポイント的に行動を改善させることは、非常に難しいことがわかりますね。

 

 

 
《介護士が持つべき視点は、要介護者の「状態」》

 
「行動」に視点を置いているため、その問題行動に振り回され、薬に振り回されやすくなります。要介護者の日々の状態を観て、“活動量や生活意欲が過剰なのか過少なのか”を判断する必要があります。

 
認知症状は個人によって日によって波があります。人によっては数日毎に極端な変化を繰り返す場合もあり、その度に内服薬を変更することは不可能です。入院して治療しなければならないほどの疾患がないのであれば、問題行動を早急に解決することはないため、数日間「状態」を観察しましょう。

 
介護士は“なんとかしなければ”という責任感で慌ててしまいますが、それが認知症状や薬に振り回されてしまう結果になりかねません。問題行動に対する対応策はスタッフ間で話し合いながら、それも含めて医師に「状態」を相談すると、とても伝わりやすく治療に効果的な相談ができるようになります。

 
要介護者の問題行動を医師に相談するとき、何を伝えるべきかが明確になることは、介護士としてどのような効果があるでしょうか。あなたの視点が要介護者の状態を左右します。

 

 

 
薬には必ず、本来目的とする作用と、副作用があります。ピンポイントで効果を発揮することは不可能なことであり、人間の行動は常に中枢神経系に支配されていることを知っておきましょう。今あなたが要介護者に対して問題としているのは「周辺症状」でしょうか。「中枢症状」でしょうか。

 
抗認知症薬は、ただ進行を遅らせるものであって病状は不可逆的です。あなた自身も高齢者の認知症状を解決するために介護の専門家になったわけではなく、認知症ながらも安定した生活をもたらす介護をしたいと思って選んだはずです。その職業を選んだときの自分を思い出しましょう。

 

 

 

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