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Yamasaki Rinko

要介護者の暴言・暴力に感情的になったときに読むやつ。

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介護保険は社会の高齢化に対応するため、1997年に国会で制定され、2000年4月1日から施行されました。

 
その目的は、
加齢に伴って生じる心身の変化及び疾病等によって要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者が、その尊厳を保持し、有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、必要なサービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ること、
とあります。

 
ところが要介護状態の人に関わることは、そう容易いことではなく、介護者自身においても施設内においても様々な問題が起こっています。その職業についたときには“誰かのために役立ちたい”という貢献的な気持ちだったはずなのに、実際の介護の現場では、介護者のやり場のない感情や理不尽な出来事に日々困惑し、介護者自身に心の病が発生したり健康を損なうなど心身ともに疲れ果てて退職していく人が後を絶ちません。

 
やり場のない感情は心の中に蓄積され、ある日突発的に爆発し虐待や暴力行為に取って代わる恐れがあり、ときに介護者の問題として報道されています。要介護者に身体ケアをしようとしているとき「うるさい!」「どっか行け!」「あんたなんかにしていらん!」など暴言を吐かれ、ときには暴力行為を受けたとき、介護者は一体どうすればよいのでしょうか。

 

 

 
《介護者が焦点を合わせるべきなのは、両者の“関係性”》
介護者が感情的になってしまうのは、言葉や行動に焦点を合わせていることが原因です。

 
例えばあなたは、要介護者の入浴介助をするために部屋に行きます。
「○○さん、お風呂入るよー!」と言っていきなり布団を剥いで、体を動かそうとしていないでしょうか。
もちろん介護の時間は決められているため時間の制約があり、介護者であるあなたは要領よく仕事をこなさなければ次の要介護者に迷惑がかかってしまいます。
もし要介護者がお風呂好きであれば従うでしょう。

 
しかしながら多くの高齢者は、外に出ることも汗をかくこともなく、昔は毎日入浴していたわけではないため、入浴にそれほど重要性を感じていないかもしれません。
それを予告されていたとは言え、部屋に入ってくるなり自分の意見を無視して一方的に強要された場合、不快感を露わにして当然かもしれません。
相手を力で支配しようとした場合、相手も全力で抵抗します。
食事、着替え、洗面、外出、処置、排泄、すべての介護にこのことが言えます。

 
要介護者は本当にそのケアを求めているかどうか。
とはいえ、介護者も仕事であり、生産性を上げなければなりません。
多くの介護者が、“行わなければならない介護”と“要介護者の抵抗”の間でダブルバインドとなり、自分が本当にやりたいことがわからなくなります。
そうして仕事に行くことがだんだん苦痛になっていくのです。

 

 

 
でもね、考えてみてください。
介護者が自分自身の感情や自分の価値観にこだわっていて、果たして“人の役に”立つことができるでしょうか。
自分の感情にこだわっている介護者は、同時に自分自身を見失っています。

 
介護者がこだわるべきなのは、その職業を選んだときの自分。
あなたが求めていたものは、介護を通して得られる「要介護者との関係性」や「自分の存在価値」だったはずです。
同じく要介護者も「介護者との関係性」や「自分の存在価値」を求めています。
両者にとってケアは単なる手段であり、お互いに求めているのは心の関わりです。

 
つまり入浴介助という目的で要介護者の部屋を訪れたあなたが、まず行うべきことは“関わり”。
世間話や昔の話でも何でもいいのです。
わずか5分。たとえ要介護者が重度の認知症であっても同じ。
要介護者のそばに座り、発言に耳を傾け、同じ声のトーンで、同じ声のボリュームで、同じ口調の速さで対話してあげること。
話の辻褄は合わなくても、波長を合わせてあげると要介護者は「自己肯定感」を感じます。
それから「お風呂に行きましょうか」と徐々に促していきます。

 
介護者が初めから「入浴介助」という“行動”を目的に介護をすると、介護を受ける側も初めからあなたの行動に反応し、暴言や暴力などで抵抗します。
そして介護者が感情的になっていると、介護を受ける側も感情に支配されていきます。
介護者がまず「関わり」という“在り方”を目的に介護をすると、介護を受ける側もまずあなたの在り方に反応します。
“あなたのために役立ちたい”という隠れた思いが、なんとなく伝わるんですね。

 

 

 
病気を抱えた人、自分のことが自分でできなくなった人は問題を抱えたクライアントと同じです。自分と相手など現状の関係性を客観的に観る視点を「観照者」と仏教では表現しますが、効果的な関係性づくりにはこういった第三者の視点が必要不可欠です。つまり看護師・介護士・福祉士・ケアマネなど介護に関わる専門職には、問題を解決していくセラピストとしての要素が必要になっています。

 
介護保険の開始から15年経った今も介護の質が向上しないのは、早急に介護士を増やす必要があるため、国が介護士養成講座のレベルを上げようとしないためです。日本の介護全体の質を上げ、そして介護者が“代わりの利かない私”、“あなたに出会えてよかったと言われる私”になるには幅広い学びと、あなた自身のネガティブな経験を智慧に変えるプロセスが必要です。

 

 

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